万年青の交配は各工程のハードルが高いとのお声を頂き、実生の手引きを作成いたしました。pdfファイルでの配布となります。
Rohdea japonica
万年青(omoto) Rohdea Japonica Roth 現在ある1,000種を超える登録品種は、千代田城・図や虎などの突然変異種、金峰山・聖富貴などの形質変異種、舞鶴城のような山採り種を除くと、ほぼすべてが実生で作出されてきました。 各系統に名品がありますが、なぜ登録されて人気があるのでしょうか。それは「特徴があるから」の一言に尽きると思います。富国殿のシルエット、舞子の丸さと覆輪の深さ、力和の肉厚な葉芸など。 楼蘭と鸞山は完成品の構成は似ていますが、芸足やサイズ、地合いに違いがあります。文晁と四薫も似ていますが、葉繰りの数と葉の形が異なります。これらは万年青を見慣れた人にだけわかる違いであり、やはりその木を一目見てわかるというのが長く愛される秘訣です。 そしてそれは狙っても作れるものではありません。生えるときは生えてしまうのです。長年やったから生えるものでもなく、多くの名品はその実生家さんが初期に生やした羅紗実生の中にあったりもします。F1ばかり使っていた人が実親の名品を使って交配したら生えたという例も近年ありました。その実生は今ある名品と並べても遜色なく、特徴のあるものです。 獅子系は四君子、海龍獅子、夫婦獅子が偉大過ぎて完成している感がありますが、羅紗獅子はまだ空いています。羅紗系で葉芸が極まっている品種といえば巌武や寿冠ですね。総雅糸竜でいえば清鑑や萬亀。それ以上の基準が分かりませんが、それ以上の葉芸を安定して生み出す実親はありません。厳しい芸をのせることで、品がなくなる可能性もあります。 でも目先を変えてみると、太楽タイプで葉繰りが良くなる、双天や舞子の葉先まで丸いタイプ、峻嶺の形で芸が変わる、熨斗二面系もまだ理想には達していません。栄松のような千代田羅紗、真の千代田羅紗獅子を作る、山千代型の羅紗を作るなど、まだまだ新機軸を打ち出すことはできます。 実親でいえば、いまだに良いものは昔ながらの実績ある実親を使ったときに生えたりしています。 英宝の出現で万年青の実生は大きな進歩を遂げましたが、その後はどうでしょう。もちろん次世代の実親には目星を付けていますが、まだ歴史が変わるほどの雄木は生まれていません。ちなみに英宝は大車系と大宝系、異なるタイプの実親に交配すると形が変わるというヒントがあります。 胡麻斑系はどうでしょう。形は想像できますが、名品は三光鳳で止まっているように、本当に良い実親といえる物は、まだできていません。 千代田系では、当時、丸葉の千代田羅紗を多数輩出した本当に良い実親は、他所に引き継がれていません。 獅子は?砂子斑の本格的な羅紗や獅子は?以前、故清水さん棚で見かけた砂子羅紗は結局世に出ませんでした... 斑を変えるだけでも狙える世界は広がります。 万年青は、実親も決まりものもまだ途上なのです。 付け加えると、生えたものを大切にして受け継がれていくというストーリーそのものに価値があります。 「実生は生えたときから万年青界の宝だ」という言葉もあるように、実親も実生も抱え込むことで大きな損失になるということもお伝えしたいことですね。